2026年4月、ニッポン放送『オールナイトニッポン』の火曜日に、サカナクションのフロントマン・山口一郎さんが新パーソナリティとして登場します。

前任はあの星野源さん。

そのバトンを受け取ることになった山口一郎さんが、3月9日の記者会見でこんな一言を放ちました。

「音楽業界の裏側をたくさん知っておりますので、暴露系パーソナリティとして頑張っていきたい」。

会場が笑いと期待でどっと沸いたこの発言、果たして本気なのか冗談なのか、聞いた瞬間に思わず前のめりになってしまいますよね。

さらに会見では、中日ドラゴンズへの愛が爆発する場面まであったというから驚きです。

記者会見の発言をひとつひとつ丁寧にひもときながら、これから始まるサカナ山口ANNへの期待をたっぷり語っていこうと思います。



暴露系パーソナリティ発言の真意

「暴露系」という言葉を聞いた瞬間、ドキッとしませんでしたか。

音楽業界を20年近く歩いてきた人物が、深夜ラジオで何をぶちまけるのか——そんな期待と緊張が、一瞬で頭の中を走り抜けた人も多かったはずです。

でも、発言の全体を聞くと、その言葉の印象がガラッと変わってきます。

山口一郎さんが会見で語った言葉は、こうでした。

「私はミュージシャンで、来年でキャリア20年目です。

ということで音楽業界の裏側をたくさん知っておりますので、暴露系パーソナリティとして頑張っていきたいなと思っております。まあそれは冗談として(笑)」。

笑いを取ったあと、すぐに続けたのがこの言葉です。

ミュージシャンから見た景色であったり、皆さんが感じることとかをうまく代弁できるようなパーソナリティになっていきたい」。

つまり「暴露系」はあくまでつかみだったわけです。

過激なフレーズで場を温めてから、本当に伝えたいことを静かに置く——この流れが、いかにも山口一郎さんらしい演出でした。

素直に「代弁したい」と言えばいいところを、わざわざひとヤマ作ってから届ける。

照れ隠しと、ファンへのサービス精神が混ざったような瞬間だったように思います。

この「代弁したい」という言葉の重みは、彼の経験を知ると余計に響いてきます。

山口一郎さんは2024年1月にうつ病を公表し、長い休止期間を経て活動を再開しました。

音楽を聴くことすら困難だった時期があった、と本人も語っています。

だからこそ「つらい思いをしている人や悩んでいる人が頼れる場所を作れれば」という言葉が、表面的なキャッチコピーではなく、自分の皮膚で感じてきた言葉として伝わってくるのでしょう。

体調については会見でも問われ、こう答えていました。

「一生付き合っていく病気だと思っているので寛解はしていないですが、うまく病気と肩を組んでやっていく、そのことはこの1年やってこられたので、大丈夫だと思います」。

「病気と肩を組む」という表現、好きだなと思いました。

闘うでも、抱えるでもなく、肩を組む。

その言い方ひとつに、深夜のマイクとの向き合い方が透けて見える気がしませんか。

ちなみにニッポン放送の社長も会見で「病気を患っていらっしゃいますが、いろんな人の気持ちが分かる」とコメントしていたそうです。

ファンのあいだでも深夜放送による睡眠リズムへの影響を心配する声は上がっていますが、本人が「大丈夫」と言い切っている以上、信じて応援するしかないですよね。

星野源さんへのプレッシャーについても、正直に口にしていました。

「ずっと星野さんのラジオを聴いていたので、すごくプレッシャーを感じております。

星野さんがどう思っているのかも気になりますね。

同じミュージシャンとしてうまくバトンを受け取れたら」。

二人はソロ活動を始めた頃からの付き合いで、お互いのライブに行き来していたこともあったけれど、最近は少し疎遠とのこと。

同い年、同じミュージシャン同士。

その後を継ぐというのは、どれほどのプレッシャーか——想像するだけで背筋が伸びます。



サカナ山口ANNを支える3つの軸

記者会見の発言や過去のラジオ出演を振り返ると、山口一郎さんがこの番組で武器にしていくものが見えてきます。

  • 文学的な言葉選び
  • 音楽業界の裏側トーク
  • そしてリスナーとの双方向の対話

この3つが重なったとき、深夜ラジオとしての独自色が際立ってくるのではないでしょうか。

①言葉へのこだわり

山口一郎さんは歌詞の執筆において太宰治などの文学作品から深く影響を受けており、著書『ことば』でもその哲学を丁寧に語っています。

言葉を選ぶという行為に、これだけ誠実に向き合っているパーソナリティはなかなかいません。

そのこだわりがそのままラジオに流れ込んできたら、深夜2時間がかなり豊かな時間になりそうですよね。

会見で印象的だったのが、中島みゆきさんへの憧れを語った場面です。

「中島みゆきさんが(リスナーから)送られてきた手紙をもとに曲を書かれていて。

ラジオには音楽が生まれるエッセンスがあるんだなと知ったときに、すごいことだなと思いました。

自分は来年でキャリア20年になりますし、やっとそういうこともできるようになるのかなと思っています」。

単に「ラジオをやってみたい」ではなく、「ラジオから音楽を生み出したい」という創作的な野心がある。

リスナーの手紙がきっかけになって新しい楽曲が生まれる瞬間が訪れたら、それはサカナ山口ANNにしかできない体験になるはずです。

②音楽業界の裏側トーク

2019年のスペシャルでは「音楽業界、一歩踏み込んだ質問」がテーマで、2024年は「知りたい!音楽にまつわる裏話」が中心でした。

どちらも、タブーすれすれの話題に踏み込みながら、迷惑をかけない絶妙なさじ加減で笑いに変えていたと評判です。

今回の会見でも「番組に迷惑をかけない程度に話していけたら」という言葉が出ていて、そのスタンスはしっかり一貫しています。

YouTube雑談配信「いっくん」で見せる親しみやすいキャラクターも、大きな武器になるでしょう。

かつてクールでシリアスなイメージを纏っていた山口一郎さんが、おちゃらけたり笑いを取ったりする姿を見て、「こんな人だったの?」と驚いた人は少なくないはずです。

その二面性がラジオで自然に行き来するたびに、深夜の空気がぐっと濃くなっていく気がします。

③双方向の対話について

初回からメールアドレス(sakana@allnightnippon.com)とハッシュタグ(#サカナ山口ANN)が公開されていることからも、本気でリスナー参加型の番組にしていく意欲が伝わってきます。

深夜ラジオの醍醐味は、パーソナリティとリスナーのあいだに生まれる「夜の連帯感」です。

テレビではなかなか生まれないあの感じ、深夜にひとりで聴いているからこそ生まれる不思議なつながりが、このラジオでも育まれていくのではないでしょうか。

山口一郎さんが「楽しく夜を乗りこなしたい人にも聴いてほしい」と語っていたように、悩みを抱えた人も、ただ夜をひとりで楽しみたい人も、どちらも受け入れてくれる番組になりそうです。



ゲスト候補に中日OBが並ぶ理由

記者会見でいちばん会場が沸いた場面のひとつが、ゲスト候補の発表でした。

「中日ドラゴンズのOBに来てもらいたい。

川上憲伸さん、山本昌さん……」。

この言葉が出た瞬間、音楽ファンも野球ファンも等しく「え?」となったのではないでしょうか。

そのマニアックさが、サカナ山口ANNの色をいちばんよく表しているかもしれません。

なかでも目玉として語られたのが、ソイロ・アルモンテ選手のエピソードです。

「(サカナクションの)新宝島って曲をバッターボックスに立つときに使ってくださいってお願いしたんですよ。

『いいよ』って。

1、2打席使ってくれたんですよ」。

ところが途中から使われなくなり、理由を聞いたら「お母さんにやめろって言われた」と言われたというのです。

この真相を番組でぜひ確かめたい、というのが山口さんの熱望でした。

お母さんの一言で「新宝島」が球場から消えていく——どこかコントのような展開ですが、本人がここまで具体的に語っているなら、絶対に番組の一コーナーとして成立しますよね。

実はこのエピソードには、ちょっとしたその後があります。

2026年3月、山口一郎さんは中日ドラゴンズ球団90周年記念ソングとして「新宝島 (Dragons Mix)」を自らアレンジ制作し、ノーギャラで提供

バンテリンドームでの使用も始まっています。

愛が高じて、ついに公式の形になってしまいました。

アンバサダーどころか、もはやドラゴンズの一員と言っても過言ではないかもしれません。

収録場所の希望として「バンテリンドームの記者室で」と言い出したときには、さらにどよめきが広がったようです。

「今ドラゴンズのアンバサダーやってるんで多少の無理は聞いてくれるかな」という一言がまた頼もしい。

ラジオブースを飛び出してドームの記者室から放送するアイデアは、深夜ラジオの概念を少しずつ崩していく実験の一つでもあります。

父親(元ヒッピーの保さん)もゲスト候補として名前が挙がりました。

保さんは木彫作家で、かつての運河保存運動にも関わった経歴を持つ、なかなか規格外のお父さんです。

過去のFMおたるでの親子対談では、幼少期の話や上京エピソードが語られ、ファンのあいだでも評判が高かったそうです。

それがANNのマイク前で再現されたら、笑えてほっこりするだけでなく、山口一郎というミュージシャンのルーツをそっと覗けるような、得難い時間になりそうではないでしょうか。

他にも「小樽出身なので加藤浩次さん」「あまり好きじゃないけど北海道つながりで大泉洋さん」という発言があったそうで、後者は本人も笑いながら言っていたようです。

「あまり好きじゃないけど」を呼ぶ理由にするのは、なかなか独特のセンスですよね。



山口一郎がラジオで目指す新境地

単なるトーク番組にはしたくない、という意欲が会見の随所ににじんでいました。

なかでも目を引いたのが「AIが作る音楽をラジオで実践してみたい」という発言です。

深夜ラジオという場で、AIと音楽の実験を公開でやってしまおうというのは、かなり攻めた発想ではないでしょうか。

山口一郎さんは過去にNHK Eテレの音楽実験番組にも出演しており、音楽と技術の交差点に純粋な好奇心を持ち続けている人物です。

「音っていうのは目で見えないですし、手で触れないものなのですごくラジオに向いている」という言葉が、その感覚をうまく表しています。

目に見えない音を耳だけで届けるラジオという媒体だからこそ、AIが生む音楽をリスナーと一緒に体験する意味がある——そういうことなのでしょう。

 

音楽制作の苦悩についても、これほど正直に語れるパーソナリティはなかなかいません。

歌詞の一言を選ぶのにどれだけの時間がかかるのか。

ライブ本番の舞台裏で何が起きているのか。

うつ病の時期に、音楽との関係がどう変わっていったのか。

どれも「ミュージシャンから見た景色」として語られるはずで、音楽好きにはたまらないトークになるでしょう。

 

2027年はサカナクション活動20周年にあたります。

このラジオは、その節目に向けた助走期間でもあるのかもしれません。

休止と復活を経験し、「病と肩を組む」と言い切った人間が、深夜2時間のマイクの前でどんな言葉を選ぶのか。

単なる「有名ミュージシャンのラジオ」ではなく、表現者としての山口一郎が自分自身を再構築していく場——そう見ると、このラジオの見え方が少し変わってくるのではないでしょうか。

魚民としては、体調のことを少しだけ心配しています。

深夜放送は体のリズムへの影響が大きいですし、一生付き合う病気を抱えながらの挑戦は、外から見るよりずっと大変なはずです。

でも、「大丈夫だと思います」と自分の言葉で言い切っていた山口さんを信じて、応援したいと思っています。

初回放送は4月7日(火)深夜1時から。

メールはsakana@allnightnippon.comで受け付けています。

私もそろそろ何を送ろうか考えているのですが、アルモンテ選手の件をリクエストするか、中日OBトークをおねだりするか、それとも「新宝島 Dragons Mix」の制作秘話を聞いてもらうか——悩んでいる時間が、すでに楽しいです。

山口一郎さんが深夜に届ける言葉が、魚民だけでなく、たまたまラジオをつけた誰かの夜にも届いていったらいいな、と思っています。

4月7日、眠れない夜は一郎さんの声を聴いてみてください。